イチゴ王国の後継ぎ問題(2013/9/18)宮田由美子
私の故郷である栃木県は40年以上イチゴの収穫量が全国1位のイチゴ王国です。
しかし、近年栃木のイチゴの絶対的エース『とちおとめ』に絶体絶命のピンチが訪れています。
それはイチゴ王国を揺るがす後継ぎ問題です。
1980年代は東の横綱『女峰』(栃木)、西の横綱『とよのか』(九州)
と呼ばれイチゴの2大いちごブランドが君臨していました。
しかし、平成元年、2年に『とよのか』要するライバル福岡に生産量で敗れてしまいました。
イチゴ王国の威信をかけ、女峰に続く新たな栃木のブランドイチゴとして開発されたのが、
『とちおとめ』です。
『とちおとめ』は甘みと酸味のバランスに優れ、大粒で収量性も女峰より高く、
輸送性に優れており、消費者だけでなく、
生産者にとっても優秀なイチゴとして首都圏を中心に生産量を伸ばしていきました。
しかし、『とちおとめ』は平成8年11月に品種登録されました。
平成8年の品種登録の有効期限は15年であったため、
平成23年11月に『とちおとめ』の育成者権は消滅してしまいました。
育成者権が切れると全国で栽培可能となり、品種の均一性を保つのが難しくなり、
栃木の『とちおとめ』ブランドという武器を失った状態です。
また、近年は福岡の『あまおう』が大粒の高級いちごとして人気を獲得し、
単価では劣る状況が続いています。
何としても『とちおとめ』に続く次世代エースが不可欠な状況なのです。
そして、ついに平成24年待望の後継品種『栃木i27号』を特許庁に商標登録出願を行い、
平成24年9月7日に新品種名を『スカイベリー』として商標登録されました。
開発期間は平成6年から実に17年。
10万株以上の中から果実の大きさ、食味の良さ、流通適正、耐病性などの
観点全てを満たす品種を選択するという膨大な時間と手間を費やして開発されたのです。
『スカイベリー』の名前の由来は
「大きさ、美しさ、おいしさの全てが大空に届くようなすばらしいいちごである」事に加え、
栃木県にある百名山の一つ「皇海山(すかいさん)」にも因んでいるそうです。
スカイベリーの特徴は
① 25g以上の果実発生割合が6割以上を占める極めて大果
② 見た目に優れ、糖度と酸味のバランスが良い
③ 病気に強いので農薬を減らせる
④ 寒さに強く電照不要で省エネ栽培出来る
と、栃木県が総力をあげて開発した究極のイチゴです。
スカイベリーは現在試験的に栽培されており、
本格的な生産、販売は平成26年冬からの予定だそうです。
『あまおう』という良いライバルの台頭とイチゴ王国としての
プライドが究極のイチゴ開発への原動力となったのだと思います。
しかし、かつては究極のイチゴであった『女峰』や『とちおとめ』のように
時の流れと時代の変化と共にいつまでも究極のイチゴではいられないのです。
きっと『スカイベリー』の次に続く究極のイチゴ開発がもうすでに始まっていることでしょう。
会社経営も同じではないでしょうか。
究極の技やサービスを目指し、たどり着いた究極の技やサービスの進化、
革新を続けていかなければ成長し続けられないのだと改めて感じました。