収益の計上時期(2012/12/26)鎌田直弘

収益の計上時期の考え方については、
大別すると現金主義と発生主義の2つに分類されます。
 

現金主義と発生主義

現金主義とは、現金収支の事実をもってはじめて会計的事実を認識する考え方をいい、
現金(金銭、その他経済的な利益を含む)が現実に手元に入ってきたときに
収益を認識する考え方をいいます。
これに対し、発生主義とは、当期で発生した収益は、現金収支の有無にかかわりなく
当期の期間損益として認識するという考え方をいいます。

現行の収益の認識基準

現行の収益の認識基準は、現金主義ではなく発生主義が原則とされています。
その理由としては、次の2つの点が挙げられます。

①今日の複雑化した経済社会においては、信用取引が支配的で、
  多数の債権・債務が併存し、現金主義によっては
  企業の期間損益を正確に把握することが困難であること。

②現金主義のもとでは、租税を回避するため、収入の時期を先に引きのばし、
  あるいは人為的にその時期を操作する傾向が生じやすいこと。

収益の発生について

収益の発生した時期については、過去の判例・学説等をみると、
権利の確定した時期とされています。
これは、『権利確定主義』と呼ばれる考え方であり、法的な債権に着目した考え方です。

権利確定主義による収益の計上時期

一般的な商取引の権利の確定した時期をみてみると、例えば、

①商品の販売に係る収益については、その商品の引渡しがあったときとされており、

②サービスの提供については、そのサービスの全部が完了したときとされています。

これらの2つの取引に共通していえることは、
契約の当事者が同時履行の抗弁権を失ったときに収益の認識をしているといえるでしょう。
同時履行の抗弁権とは、契約の当事者が
「あなたが義務を履行するまでは、私も義務を履行しませんよ」
と対抗できる権利のことで、契約当事者の一方が義務を履行することで消滅します。
つまり、商品の引渡しやサービスの全部を完了すると、
同時履行の抗弁権を失った相手方に対して無条件で義務の履行を請求できることになります。

このように考えると、権利の確定時期とは収益の蓋然性が高くなったとき、
すなわち収益を得られるであろう見込みが、
極めて高くなったときと考えてもよいのではないでしょうか。