≪なぜ不況になるとラーメン屋が増えるのか≫ (2010.03.24)

第35回は、税務監査事業部の佐藤靖による
なぜ不況になるとラーメン屋が増えるのかをお届けいたします。

長引く昨今のデフレ不況。
サブプライムローン問題やリーマンショックに 端を発したこの『世界発』不況は今尚我々の生活に暗い影を落としています。

さて―

読者の皆様はこんな言葉を耳にしたことは無いでしょうか。

『不況になると○○が流行る』
『不況になると○○が増える。』


さて、○○には何が当てはまるでしょうか?

最近では幕末ブームがそれに当てはまるかもしれません。
『坂本竜馬』や『坂の上の雲』。
長引く不況に対してのニューヒーローの出現を世の中が期待している現われでしょうか。
他には就職氷河期を懸念しての資格ブーム、一攫千金を狙っての公営ギャンブルも底堅い と聞きます。
他には…ラーメン屋さんも自宅の周りになぜか増えていませんか?
歴史や資格や ギャンブルは不況から連想されるのに、今やワンコインでも食べづらくなったラーメンがなぜ。
この謎を追ってみました。

『中食』ブームやコンビニ攻勢に押され、外食産業全体の売上規模は、1997年の29兆円を ピークにここ10年間で、下がり続けています。
2008年は、24.7兆円に留まり、1997年から15%も縮小し、10年間で約4.3兆円の売上減となりました。
その外食産業の中で、一人気を吐いてきたラーメン産業。1997年から比較しても、わずか 2.3%減で留まっています。
そしてその市場規模は、居酒屋(5,000億円)、回転寿司(5,000億円)ハンバーガー(6,300億円)と比べても大きい7,000億円。
いかにラーメン産業が『不況に強い』かがわかるでしょう。そしてその秘密は商品と業態にあるようです。

不況に強い理由①
売上総利益率(粗利率)が高い。
※ 売上総利益率…粗利の売上に対する構成比を示す。
全国のラーメン店を平均するとおよそ69%と高く、収益性が高い商品であることがわかります。

不況に強い理由②
原材料(小麦粉等)が比較的安く、自家製麺の場合は限界利益が更に高くなる。
※ 限界利益…売上高から変動費(材料費・人件費)を差し引いた利益。
自店で麺を製造・提供することにより、ラーメン一杯あたりの利益が増え、さらに固定費 (一般的な経費)を支払う能力が高くなります。

不況に強い理由③
不況下でも安く気軽に食べられるため消費率が高い。
日本人の年間消費量は約20億食以上(!)とも言われています。
一人当たり年間約20杯近くは 食べている計算になりますね。

不況に強い理由④
店舗立地のための条件が少ない。
比較的狭い調理場でも調理可能なため店舗立地を制限せず、郊外にも駅前にも出店できる業態です。

不況に強い理由⑤
新規参入しやすい業界である。
ラーメン業界は個人経営店が圧倒的に多く、牛丼やハンバーガー業界は大手チェーンの寡占化が進んでいるのに対し、店舗数は1万5800軒ある内の主要チェーン15店の比率はわずか20.8%を占めるに過ぎません。

上記5点が『ラーメン屋さんは不況に強い』『不況時にラーメン屋さんは増える』理由でしたが、一番の理由は不動のナンバーワン国民食としてのその地位と、愛されるB級グルメとしての永遠のキャラクターなのかもしれません。

個人経営の店が大半を占め、チェーン店にとって『最後の楽園』と称されるラーメン業界。
依然続くデフレ不況の中で、資本の強固なチェーン店が少しずつ勢力を拡大しているようですが、独自色を持った個人店こそ、日本の古き良きラーメン店のルーツである気がします。

私たちの楽しいラーメン談義のためにも…頑張れラーメン屋さん。

(担当:税務監査事業部  佐藤 靖)