≪建築用石材について≫  (2010.02.10)

第29回は、資産税事業部の大島伸吾による
「建築用石材について」をお届けいたします。

日本は紙と木の文化、ヨーロッパは石の文化といわれることがあります。
主として建造物については文化の相違は顕著に現れます。
しかし、日本においても明治以降さまざまな場面において石が建築材料として使用されるようになってきました。

建築用石材の岩石は成因、成分などで分類されますが、大別すると2種類しかありません。
地核より噴出した火成岩の火山岩(代表的な石は花崗岩)と、太古の生物の無機質部分であるサンゴ、貝殻などが堆積して作られた堆積岩の石灰岩(ライムストーン、limestone)です。

2種類の岩石は地殻変動、水の作用、ミネラル類の混入、両種類の混合(貫入、または分解後の堆積)等により様々な表情に変化して、石の種類を形成します。

石灰岩が地殻変動などで変成して造られたのが変成岩の大理石(marble)や、方解石(カルサイト、calcite)です。

強く変成作用を受けた石灰岩にはオニックスと呼ばれるものがあります。

建築用石材には、天然の岩石に切断・研磨をして使うものと、天然の岩石を砕石し、セメントや樹脂を混合して作った人造石(例えばテラゾ)があります。
天然石は大別して大理石と花崗岩(御影石)に分かれます。

大理石は、石灰岩をはじめとする炭酸塩岩が変成作用を受けて再結晶した方解石からなる岩石である。
粗粒であることが多く、一般に白・灰色をしている。時にはさまざまな色やまだら模様をもちます。
酸に弱い欠点があります。

産地としてはイタリアのトスカーナ州カッラーラなどが有名です。

大理石の名称は、中国の産地雲南省大理に由来しているそうです。
建築材料としてビル内装に、特に上等な仕上げ材として、イタリア産大理石がよく使われますが、最近は価格の 安いアジア産のものも使われてます。

大理石でできた建造物は数多くありますが、古代ギリシアのパルテノン神殿、ローマのコロッセオ、インドのタージ・マハルなどがよく知られています。

御影石は花崗岩や花崗閃緑岩などをさします。
細かい粒状の模様をもち、色合いによって青御影、黒御影、白御影、桜御影、赤御影に分けられる。
御影石の名称は兵庫県六甲山麓の御影地方に因み、ここで採れるものを本御影と呼んで、他の産地のものと区別しています。

青・黒・白御影は建築・土木用や石碑や墓石に使われ、赤御影は高価なので専ら装飾用に使われています。

日本は原石が僅かしか採れないので、原石は殆ど(100%近く)輸入に頼っています。

建築用石材として即使える状態に切断・研磨済みのもの及び花瓶・墓石・庭石・灯籠・灰皿などの加工品を含めての製品輸入は輸入総量の約40%になっていて残りの60%は原石を輸入して日本で加工していることになるそうです。

上述のような状況なので、日本からの建築用石材の輸出は皆無といってよいかもしれません。

建築石材では、御影石が70%、大理石が30%使われ、中国からの御影石の完成品が30%、残り70%は輸入原石を日本で加工したものである。
大理石はイタリア、フランス、スペイン、ギリシャなどより輸入されています。

流通経路は、
1) 石材メーカー → 問屋 → ゼネコンなどのユーザー
2) 海外メーカー → 商社 →      〃     
が普通ですがDIYショップやホームセンターなどは中国などより直接輸入するケースも増えているようです。

輸入時や販売時の規制は特になく、法律に基づく表示義務も特にないそうです。

日本のメーカーが海外へ独自で進出しているケースは少なく、技術指導をして製品を購入したり、合弁企業をつくってやっているケースが多いようです。日本での採石場の減少・加工賃の高さなどにより、今後ますます中国などへの依存が高まると予想されます。

昨今の不況により、百貨店、ブランドショップ、ホテルの新規出店、改装計画は減少あるいは見直しなどされていますが、それでも一歩街に出れば、大理石などの自然の力が創りだした微妙な色調と模様で装飾を施された建物がたくさんあります。

皆さんも、「石」を観に街にお出掛けになってはいかがでしょうか。

(資産税事業部 大島 伸吾)