≪学校法人の会計≫ (2009.12.16)

第24回は、資産税事業部 小林 仁による
「学校法人の会計」をお届けいたします。

◆学校法人とは
例外はありますが、民間が設置する学校(私立学校)を学校法人といいます。
国、地方公共団体を除き、この学校法人だけが学校教育法に定める学校を設立することが出来ます。
ただし、幼稚園だけは学校法人を設立しなくても個人事業として認可を受けられます。(個人立幼稚園)
余談ですが、準学校法人というものもあり、専修学校・専門学校、その他では具体的に予備校等や自動車教習所などがあります。
これらは都道府県の認可を受けると学校法人になることが出来ます。
また、最近では、保育園と幼稚園が合体した「認定こども園」の設置が可能になりました。

◆学校法人じゃない学校?
学校法人でなくても学校を作ることが出来ます。
実際に学校法人と冠していない学校も数多くあります。
メリットとしては、学校教育法に縛られない自由な教育を行うことが出来る点にありますが、経歴として認めない等のデメリットも数多くあります。

◆学校法人の特徴と一般企業の違い
学校法人の最大の特徴にして最大のメリットは、「補助金が受けられること」と「ほとんどの収入が非課税であること」にあります。
学校の種類によって異なりますが、毎年交付を受けられる補助金や、建物の建替え費用の一部補助や、低金利の貸付等いろいろな種類の補助金があります。
また学校法人は、公共・公益の用に供されている実情等を考慮して基本的に税金が課税されません。 (例外として収益事業には課税されます)。

よって、この補助金も非課税扱いとなります。
しかし、一般企業と異なりその運営や会計など私立学校法等による厳しい法律を順守しなければならず、その事務手続きも膨大です。
教育に関して学校教育法によることは当然ですが、補助金の使い道を明らかにした補助金実績報告書の作成や、通常よりも複雑な学校法人会計基準による経理、値上げ・値下げは当然の事ながら文部科学大臣の認可が必要になります。
また、一般企業より理事会や評議委員会などの設置・解散の場合の財産の帰属などについての要件が公共性を高めるために相当厳しくなっております。

◆一般企業と学校法人会計の違い

 一般企業の会計と学校法人会計の大きな違いは、「財産の保全」と「資金繰り」にあります。
もちろん両方とも一般企業でもとても重要な事ですが、学校法人ではさらに重要視されています。
具体的に両者の決算書の違いをみてみましょう。

◎貸借対照表

 貸借対照表とは、法人の財政状態を見る書類です。簡単な表現をすると 財産と負債(借金)の一覧表です。
両法人とも作成する必要がありますが、一般企業は、現金化しやすいもの(例えば、現預金・売掛金等)から表示されますが、学校法人では、固定資産(土地・建物等)から表示され、一般企業より財産の保全を目的としていることがわかります。
たしかに一般企業と違い、業績不振だから土地を売却して引っ越すというようなことは学校法人では出来ないことだからです。

◎損益計算書
損益計算書とは、法人の損益状況を見る書類です。簡単な表現をすると儲かったかどうかを表す計算書です。
こちらは両法人とも作成しますが、学校法人では消費収支計算書といいます。
大きな違いは、一般企業では土地等の固定資産を購入しても損益には影響させませんが、 学校法人は利益の減少として処理されます。

以上が、一般企業で作成しなければならない書類で、以下の書類は任意となりますが、学校法人では決算書の書類として必ず作成しなければなりません。

◎資金収支計算書
一般企業では資金繰り表と呼ばれるものです。学校法人では学校法人会計に則った会計処理を行い作成しなければなりません。このことから「資金繰り」を貸借対照表及び損益計算書と並び重要視していることがわかります。

◆学校法人の実情
昨今の学校法人を取り巻く環境は大変厳しく、少子化による生徒数減少に加え、設備拡充に ともなう過剰債務などが経営の負担となっています。2001年から2007年の過去7年間で、 学校法人・教育関連業者の倒産(法的整理のみ)は累計で232件発生しており、事実上、 営業を行っていない・事業廃止の件数を含めるとかなりの数に上ると思われます。                                        
(資産税事業部 小林 仁)

(次回予告:税務監査事業部 美容課 中島 理子による「心に響くおもてなし」)