≪飲食店の税務1・2・3≫ (2009.12.2)
第22回は、経営企画室 小曽根 法子による
「飲食店の税務1.2.3」をお届けいたします。
1.従業員等の食事
昼食等に従業員に食事を提供している場合、この食事代の処理をどの様にしていますか。
お店の残り物や材料の端物でまかないのご飯を作り、
みんなで食べることも多いと思います。
直接お金の支払いが出てきませんし
捨てるものを食べるのだからと、帳簿に何も記録しないことがあります。
また、仕出し弁当等の支払いを、福利厚生費等に計上しておくだけでよいというわけではありません。
【給与所得として課税されないためには】
本来、食事は自分のお財布(自己の稼得した所得)の中から支払うべきものです。
会社から無償又は低い価額で食事を支給された時は、その食事代に充てる金銭の支給を受けたのと
同じことになり、経済的な利益として原則給与課税の対象となります。
しかし会社が行う給食の制度は
福利厚生的な側面があることから、次の2つの要件を満たすときは課税しないこととされています。
(1) 従業員等食事をした人が「食事の価額」の半額以上を負担していること
(2) 食事をした従業員等につき、会社の負担額(食事の価額-従業員等の負担額)が、月額3,500円以下であること
[所得税法基本通達36-38]
食事の価額(1ヶ月当たり)|個人負担|会社負担|課税要否|課税される金額
Aさん 6,000円 | 2,500円| 3,500円| する | 3,500円
Bさん 7,000円 | 3,500円| 3,500円| されない | -
Cさん 8,000円 | 4,000円| 4,000円| する | 4,000円
Dさん 8,000円 | 4,500円| 3,500円| されない | -
このように、各人ごとに計算するので、まかない食の提供状況を各人別に管理する必要があります。
【食事の価額とは】
自社で調理した食事はその食事の材料等直接かかった費用、購入してきて支給した食事は、その食事の購入価額となります。
【課税される金額の扱いは】
給与所得として課税される金額は、通常の給与に加算して源泉所得税等の計算を行います。
【徴収したお金はどう処理するのか】
従業員から実際に徴収した現金は、売上として計上します。
【課税の対象にならない場合】
残業等により支給する食事、社内等での会議の際に出されるお弁当の費用は、通常は給与課税されません。
前述したように食事は本来自分のお財布から出すものですし、材料は会社がお金を出して仕入れ、
売上となるべきものだったのです。
会社が全額負担をしている場合は、正しい処理をすること、または
これを機会に負担すること自体の意味を考えて見直してみるといいのではないでしょうか。
2.現金管理
税務調査では、通常、事前に税務署から調査に入る旨の連絡が会計事務所か会社にあるのですが、
飲食店では「現況調査」といって突然、抜き打ちで調査に来ることが多くあります。
これは飲食店に限らず
現金商売を行っている場合にいえることです。
伝票を記載しない、売上の現金を抜くなどの可能性があり
事前に連絡をしてから行う調査では証拠を隠される可能性があると思われているようです。
常日頃から現金の管理をきちんと行い、できれば、金種表を使って毎日現金残を合わせるようにしましょう。
また、レジ現金、小口現金、仕入れ用現金など区分して、生活用の現金と混在する事のないようにしましょう。
現金の管理をきちんとするということは、単に税務調査対策のためだけではありません。
現金を常に
チェックしていれば、大きな現金過不足がなくなります。
また、人の心には、魔が差すということもあります。
「ちょっと借りるだけ」「明日返すから」という気持ちから始まりずるずるとエスカレートしていくのです。
現金をいつもチェックされていると思えば牽制がきき、そんなこともできなくなります。
犯罪者を作らない、
小さな過ちのうちにわかる環境を整えるということも経営者の大事な務めだと思います。
3.収入印紙
【領収書もレシートも「金銭の受取書」】
印紙税がかかるのは領収書で、レシートにはかからないと思っている方も多いようですが、印紙税法では
「売上代金にかかる金銭の受取書」に印紙税が課税されます。
領収書もレシートも金銭を受け取って発行する書面「金銭の受取書」ですので、すべて(3万円未満は非課税)印紙が必要となります。
【レシートと領収書の両方を渡してしまったら】
レシートを渡した後で領収書がほしいと言われ、レシートと領収書の両方を渡してしまうこともあると思います。
同じ内容のものだから片方だけ印紙を貼ればいいと思っていませんか?
印紙税は文書に対して課税されるので、渡したときはレシートと領収書の両方共に印紙が必要になります。
先方で経費を二重に計上してしまうこともあり得ますので領収書を発行するときはレシートを破棄してもらうのがいいでしょう。
ちなみにクレジットカード払いのときの領収書には印紙税はかかりません。
なぜなら金銭を受け取っていないから「金銭の受取書」に該当しないからです。
【領収書の書き方で非課税になる。ならない。】
領収書(金銭の受取書)は、記載金額により印紙税の税率が異なります。
3万円未満で非課税になる受取書の記載金額は、取引金額等とその消費税額等を区分記載した場合には、その消費税額等は記載金額には含まれません。
例えば、30,009円(税抜28,580円+消費税額1,429円)の領収書の場合、
(1)取引金額等とその消費税額等を区分しない場合、記載金額が30,009円となり、印紙が「必要」です。
(2)しかし「税抜金額28,580円」「消費税額 1,429円 」を区分している場合は、記載金額は28,580円となり、30,000円未満ですので印紙は不要です。
【印紙を貼らなかったら】
印紙税は、罰則がとても重くなっています。
税務調査で見つかった場合は、
本来の印紙税の3倍の税金(過怠税)を納めなければなりません。
【消費税の取り扱い】
通常は、収入印紙は消費税では控除対象とはなりませんが、金券ショップ等で購入した場合は、
課税仕入れとして控除対象となります。
(経営企画室 小曽根 法子)
(次回予告:税務監査事業部 三木 直也による「『必ず儲かる話』は存在するのか?」)